和紙壁紙に塗布している、液剤に関するインタビュー
信州大学 繊維学部
村上 泰 教授・工学博士
Qまず液剤の特徴でもある、ナノテクノロジーについてお教えください
ナノテクっていうのはそもそも最初に大きさのスケールを考えてみると最初にメートルが入るじゃないですが、それが1000分の1になるとミリメートル、これは誰でもわかってる。つぎ更に1000分の1になるとマイクロメートルっていうだけど、これはマイクロは英語で、読み方を変えるとミクロメートルになるんですけど、ミクロっていうんだからミクロの世界なんですよ。だいたい昔の光学顕微鏡っていうのは、このマイクロメートルの世界だったんですね。だから電子顕微鏡になっても0.1マイクロメートルぐらいまでが見えるというのが今までの世界で、そこから0.1マイクロメートルよりももっと下の低いところ、小さいところを見ようねっていうのでマイクロの1000分の1の、ナノまで落としたんですね。だから1マイクロメートルは1000ナノメートル、そうするとその0.1マイクロメートルというのは100ナノメートルです。その下が10ナノメートルで、ナノメートル、
ナノの世界っていうのは1ナノから100ナノまでこの幅広いところがナノの世界です
これクリントン大統領の時にナノテクってことで大統領が発表したんで、そこから広まりましたけど、ナノと言っても小さいものを作るのは簡単なんだけど、一般的にちいさいもので不安定だとどうしても固まってしまう。固まってしまうと、これは小さく作ったはずなのに大きくなっちったねというぐらいになってしまうとナノのつもりがナノじゃないとなってしまうんですね。そこが一般的に難しいところで、顕微鏡でみると実際に見てみると大きな粒子がついてたりするんですよ。
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和紙壁紙に塗布している液剤の技術のすごいなと思うところは、感度の悪い電子顕微鏡で見ると、全く粒子が平らで、何もついてない状態に見えるのに、高分解のナノが見える顕微鏡でみると、ついている
じゃあ均一についてると何がいいのってそれは皆さんわかるようにこういう肌にイボがついてるってなったらねすぐにわかるじゃないですか、そうするとどうしてイボがついてるのがわかるかっていうと指でなぞったらひっかかる、こうなっちゃうわけですよ。ひっかかったねとどうなるかってそこはやっぱり弱いっていうかね、困ってしまうわけで、もし、これにくっつけようと思ったらこのでっぱりがあったはくっつきませんねってなっちいますよね
ここで重要なのは均一に非常に平らでなければいけないと平らだけどくっついてなきゃいけないと、そしたらどうするのがいいかというとちょっと見ただけじゃわからないけど、小さいのが均一についてるよ。っていう状態がいいっていうのは考えてよくわかってもらえてると思うんですが、こういうことで上手くくっつくし
小さいのは光の波長より小さいんですよ、そうすると光が物を通り抜けていく時に通り抜けるというよりはそんなものあった?みたいな感じで光が通っちゃうんで透明になっちゃうんですね。これが集まってでかくなっちゃうと波長より大きくなっちゃうとそこにいるね。みたいになるのでこれは物がちゃんとあそこにあるって見えちゃうんですね。そこの違いが大きいということですね。なので今回はちゃんと機能してなきゃいけなくて、かつ透明でなくちゃいけない。もしこれで色がついちょったり、あそこに何がついていてザラザラしてるよなんていったらその触感を失ってしまうし、そういうのを色々と考えると
ナノの均一につくということが、非常に重要だと思うんですね
ただし簡単ではないと思う。今までなかなかできなかったんですね、これがね、どうしても例えばこれ塗るとします。そうしたら液の中に分散させますね、分散させておいておくと、時間が経つと衝突するわけですよ。衝突したら何かくっついてでかくなっちゃったね、あー沈でんしよう。ってこと結構多かったんですよね、今まで。今まで皆さんが使われたものでも細かいはずなのに沈でんしてるよみたいなのは液の中でそういうことが起きてるわけですよ。それが
全然起きないというのは技術的に難しい
どうなるかと言いますとまず一つには粒子と粒子が反発してなきゃいけないと、実際に近寄ってきた時にはくっついちゃう理由は反発力がないからくっついちゃうんですけど、じゃ反発させるにはどうしたらいいかと言いますとだいたいこれをプラスとプラスとかマイナスとマイナスとかにしてやるとこうプラス同士だからくっつきたくないね。とかみたいな感じになるんでこの粒子をプラスならプラス、マイナスにらマイナスにきっちりコントロールしないとこれが一部がなんかプラスが一部でかいところとプラスがないところがあるとなるとないところが凝集しちゃうんでこうところがないということで均一さが凄く重要なところですね。
Qこの液剤は、1つの物質ではなく数種類の物質が同じ状態をつくっているということですか?
いや、そういうことではなくて
一つの物ができた時に違うものが上手くプラスならプラス、マイナスならマイナスを生み出してると考えてもらったらいいと思います。普通だったら、みんな平和におさまってるところにちょっと一つ違うものがあるね!みたいな状態になるわけですよ、そこだけ状態が違うね、みたいなそういうイメージをしてもらえるといいと思いますね。じゃあ、そこだけ今度やってったら上手くいくかっていうと、そこだけそうなってると一つだけ目立っちゃって落ち着き悪いねみたいになっちゃうので、じゃあ入れちゃおうみたいになっちゃうんのでみんなで上手くチャージを分散させることで安定してるんですね。だからチャージはなくてはならないんだけど一個だけがチャージになっているとなかなか安定しないでそれはなんか中のものに包まれちゃったりして。つまりですね、本当に裸にプラスがあったらいや、それ安定してないよってことで周りのひとが包んじゃうかもしれないですね。そういうこともないということはちょっとこれ難しいんですよね。よくこういう液体が上手くできたなと思います。
Qでは、和紙繊維になぜ良い状態で塗布できるのかを教えてください
これはですねたぶん、物によって、繊維の種類によってもチャージは変わってきます。どれぐらい電気がプラスなのかマイナスなのか、例えば羊毛はプラスなんですね、皆さんがよく着ているフリース、ポリエステルはマイナスなんですよ、そうすると冬にポリエステルの上に羊毛を着て、車に触ろと思うとピシャッとくる、これこれ静電気ですね。あれはマイナスとプラスでチャージが生じちゃったわけです。だから逆にいうと繊維によって電化を持ってるその電化に合わせて微妙にナノの世界を変えてやってちょうどプラスとマイナスでくっつくって状態にしてやればいいわけですよ。こっちに効いたからこっちにも効くんじゃないのという風にはならないと思いますね。だから和紙用には和紙、ポリエステル用にはポリエステル、そういうようなことをちゃんとオーダーメイドで作ってあげるということになりますね。
Q材料によって状態を変化させているんですね
だからこそちゃんとくっつくと。くっつくのももう一つ重要なことがあって濡れ性っていうのがあって最初から反発しあっているようなものはくっつかないですよね、これもかなり色々調整する必要があるはあります。
Qこの技術、先生はご存じですか
プライマーっていうのは界面活性剤に近い部分があるんですね、直接くっつかないなら最初にちょっと表面の性質を変えてやってくっつきやすくなってからくっつけてやろうということになります。これは例えば全くチャージのないもの、表面が、こっちがチャージ持ってるんでチャージがないものとチャージがあるものってくっつきにくいから、でさっき言った粒子の方をチャージがないようにしちゃうと凝集しちゃいますから、実はそういうのが一番くっつきにくいんですよ。だからチャージを持っていないものにちょっとチャージを持たせるっていうのがいわいるプライマー、プライマーっていうのは大一層にちょっと修飾してやるみたいな意味ですから
Qその技術もこの液剤は、長けてはるんですよね
カット(粒子サイドが小さければ隙間に入りやすい。凹凸のところに物理的に穴が空いてるところに入っていくわけですから、とれないよねっていうのはあります)
やっぱり一番大事なのは、例えば、強引におら、つけよといっても付くとこと付かないとこがあったら、よく考えてください、ナノの世界なんだから付かないところは穴だらけになっちゃうんですよ、そしたらせっかく他のところは上手くいってても、例えば
難燃をやるっていっても穴があったらそこから火ふいたらなにもならないわけです。だから穴がないということはとっても重要で穴がない為には自分でくっついていかなきゃいけない。
強制的にくっつけるとどうなるのかっていうと意外だがしょうがないくっつところもあればここは見てないからくっつかなくていいよみたいなところも出ちゃうわけですよ。それはちょっと本意じゃないでしょう。だから
相手に自然に近寄ったらくっついちゃうみたいなのを設計できるかどうかは結構ごまかしが効かないですね。
Qそれもやっぱり一つの技術ですね
結構ごまかしが効かないですよ。特にね、燃えるってちょっとでも隙間があると燃えちゃうんですよ、これが。だって紙ですからね。これが燃えないことを考えてください。いかにちゃんと液剤がついてるか、これが証明になるわけですよ。
Q最近よく目にする触媒やシングルナノの分子間力に関してお教えください
まず、図を描きましょうか。こういう風に平らなところにでかい粒子をやったのと、小さい粒子をやったのでは、ここのところをやったら接点がこちらの方が多いのはわかりますよね、もっとこれが平面になっていればよりくっつくかもしれないんですが、いかに体積に対して接点が広いかこれが非常に重要な要素です。これ体積がでかくて接点少なかったらどうなっちゃうかっていうとボロッと取れるよとそういう状態になっちゃうんで、出来るだけ体積あたりの接触面積を増やしたい。ならどうするか、そしたら小さくするよって自然に答えが出るじゃないですか、そこですよ。だから小さくしないといけない
ところが原子、皆さんでも原子より小さくできる人はいないと思うんですけども原子より小さくしちゃだめですよね。でも原子にしたらいいかというと原子にしたらどうなるかっていうとこういう大きな集合体で性質が決まってるのに一人ぼっちになって、皆と同じ性質を作れなんて言われてもそれは無理な話なんで、適度な大きさっていうのがあるんですよ。例えば10人ぐらい集まるのがいいのか、100人ぐらい集まるのがいいのか、そこは難しいとこあるんですけども
まず適度な大きさっていうのを実現しないといけない、これがナノテクの一番難しいとこなんですけども、今回の技術はそこが上手く出来ているっていうのがポイントだと思います
Q例えば、机の上で並べると引っ付いてます。でも壁になった時に並んでるものは落ますよね。これはなんで落ちないんですか?
それは落ちるかもしれないんですよ、だけどこれ粒子をたくさんつけると落ちちゃうかもしれないんですよ。それはなぜかというと粒子、粒子、粒子、粒子ってなっていくのでたぶん壁と粒子が一番強いはずなんですよ、この設定的には。さっき言ったように粒子と粒子は凝集しないので酸化しないんですよ。実はここがポイントなんですよ、何層もついちゃうと壁と粒子だけじゃなくて粒子と粒子になっちゃうんですね。だけど粒子の上に粒子乗ると、そういう引力が働くなら凝集しちゃうでしょってことなんで凝集しないってことは粒子と粒子はあんまり強くない、だけど壁と粒子だけが強いだから非常に薄く濡れてる、それがさっき顕微鏡で見えなかった。だからどこも矛盾してないですよね、そういう結果が得られてるってことです。だから薄いんですよ、たくさん付けてるつもりでもくっつかない。
Q分子間力でくっつくっていうわけでは無いのですね
粒子がない時にチャージして分子間力です。チャージがプラスマイナスの制限相互作用が強い。今回は制限相互作用をなんとなく上手く利用してるからこそ溶液の中で凝集しない。結構難しいんですよ、今の聞いてわかって頂けたと思うけど、
溶液の中ではお前くっつくなよって、言ってるけど、ここに来たら、おいちゃんとくっついとけよっていうわけですよ、これは難しいんじゃないですか。それをどうやってスイッチで変えるかって言ったらさっき言ったように水がなくなった時に性質変えてくっつくようにしてるってことなんですよね。
Qシマダさんがプラスマイナス両方液剤に入ってます。じゃあこちらの壁がプラスであろうがマイナスであろうがどっちかがくっつくわね。プラスマイナスあるからくっつきます、逆にこっちがプラスのやつがくっついて他の液剤でプラスについてれば落ちないってことですか。逆にいえばそういう考えですよね。
さっき分散剤って言ったのが入ってないってことは、水が分散剤なんですよ。水は乾燥すれば飛んで行くからいいけど、普通の分散剤は残っちゃうからだめなんですよ。
Qその水というのは通常の水でいいのかそれか今言うてるいろんな手を加えてる水ないいのか、なるべく精製水が?
それは不純物が入ってたらだめですよ。一般的には水道水にはイオンがいっぱい入ってます。それはプラスがとマイナスのチャージをバランスを上手くとってんのにいきなりイオンがいっぱいだよってなったらもうバランスがくずれちゃうわけですよ。だからイオンは取り除かないといけない
Q今のみたいな理屈を話していくと人が聞いてもわかりやすいかなとその技術っていうのは特出しててもこの技術を持ってるのはシマダさんのところ以外にほぼないんじゃないかなと
Qこういった技術は一般的なのですか?
いや、ないと思いますよ。ないので皆さんが思うには、よくわかんないってことなはなるわけですよ。あったらねあれと同じでわかるわかるみたいな話になるわけですよ。ないからこそわからないって言われる